生理食塩液・5%ブドウ糖

血漿浸透圧
血清中の主な浸透圧物質はナトリウム、ブドウ糖および尿素窒素で、これらの濃度が高いほど血
清浸透圧も高い。血清の浸透圧を測定することにより、血液中の塩分と水分のバランスを知ることができ、体液恒常性機構の働きをみるのに有用。

血清浸透圧は氷点降下法等を用いた浸透圧計で測定されるが、血清中のナトリウム(Na)、
ブドウ糖および尿素窒素(BUN)の濃度を用いて次の予測式で計算可能。単位は mOsm/L 。
血清浸透圧=2(Na + K meq/L)+血糖/18+尿素窒素/2.8

基準値は 280~290 mOsm/L 。

高値低値
脱水症・アルコール中毒
尿崩症・高Na血症・糖尿病
意識障害・高尿素窒素血症
発汗・発熱
ADH 分泌異常症候群(SIADH)
うっ血性心不全・低高Na血症
ネフローゼ症候群・心因性多飲症
副腎皮質機能低下・嘔吐・下痢

生理食塩水は、血漿浸透圧に近いので生理的と表現。
食塩(塩化ナトリウム、NaCl)9gを水に溶かして、1Lに調整。
9g/Lとなるので、濃度は0.9%。
NaClの分子量は、Na(23) +Cl(35.5)=58.5。
9 ÷ 58.5=0.154mol/1000mL。
∴モル濃度は、154mOsm。
Na+とCl-が、1Lの溶液内にそれぞれ154mmolずつ存在するので、
浸透圧は154+154=308mOsm/L。
電離は約85%で残りはNaClのまま。
∴ (154 * 0.85) * 2 + 154 * 0.15 =284.9mOsm/L

Na+とCl-は、1価なので、当量濃度はいずれも154mEq/L。

5%ブドウ糖液の浸透圧も血漿浸透圧に近いので、電解質を入れずに水分のみを補充したいときによく用いる。
ブドウ糖50gを1Lの水に溶かすと、濃度は50g/Lで5%。
ブドウ糖(C6H12O6
C(12) × 6 = 72 H(1) × 12 = 12 O(16) × 6 = 96   72+12+96=180
5%ブドウ糖液のモル濃度は、50 ÷ 180=0.278mol/1000mL。
ブドウ糖は電離しないので、浸透圧は278mOsm/Lで、血漿浸透圧に近い。

生理食塩水の電解質組成は細胞外液に似ているので、生理食塩水を投与すると、細胞外液(血管内と細胞間質)に分布。
ブドウ糖液は電解質を含まないので、血管内や間質に長くはとどまらない。5%ブドウ糖液を投与すると、ブドウ糖は速やかに体内に吸収されるため、水分のみを補給することになり、血管内から容易に細胞間質を経て細胞内液にもまんべんなく水分が分布。

ブドウ糖1gは4Kcal 
タンパク質4kcal、脂質9kcal 
タンパクの分解を抑えるためには、エネルギー源として十分な糖質の投与が必要。
しかし、タンパク質喪失を抑えるためには、ブドウ糖の投与だけでは限界があり、
アミノ酸の投与が必要。