ハピネス薬局

胃癌

ガイドラインから見た胃癌標準治療

広島市民病院 外科 石田道拡副部長

胃癌とは必ず胃の粘膜から発生する悪性腫瘍で、診断には内視鏡が必須。顕微鏡で確定する。

胃壁は5層。粘膜(M) + 粘膜筋板→粘膜下層(SM)→筋層(MP)→漿膜下層(SS)→漿膜(S)
深度:MかSMに留まる(T1)、MPあるいはSSまで(T2)、Sを破って胃表面(SE)まで(T3)、他の臓器まで浸潤(SI)している(T4)

胃の粘膜への刺激が慢性炎症を引き起こし胃癌が発生する。なかでもピロリ。ただし、ピロリが無くても胃癌にはなる。

高齢化に伴い、患者数は増えているが死亡例は減っている。早期発見と治療の進歩。
胃癌は切除が基本

ESD:Endscopic Submucosal Dissection 内視鏡的粘膜下層剥離術。初期。リンパ節転移がないと考えられる場合。(T1A:M N0)

リンパ節郭清術:術前に正確にリンパ節転移を知ることはできない。術後の病理診断しかない。なのでごっそり。

腹腔鏡手術:傷が小さく回復が早いが、軽症のみ。幽門側胃切除術が適応となるcStageⅠ。

進行癌では術後補助化学療法を。

生命予後の改善を期待して、
術前化学療法。
Conversion Sugery(切除不能胃癌に対する外科治療と化学療法を組み合わせた治療法)。
新規化学療法。(抗PD-1)

まとめ:
ガイドラインにより、日本での胃癌治療は均てん化している。
エビデンスに基づき、ガイドラインも刷新される。

胃癌治療の実際

広島市民病院 外科 丁田泰宏部長

胃癌の手術
切除が基本だが、できるだけ、胃を保存する。優秀な内視鏡科がないとできない。
昔と違い、基本的に脾臓は温存。進行癌でも大弯に病変がなければ脾臓は温存。大弯病変ならリンパ節郭清のため脾摘。

胃癌術後補助化学療法
TS1、XELOX(CapeOX)、SOXなど。
エビデンスがあるのは、ACTS-GC(TS1)、CLASSIC(XELOX)試験のみ。

術前化学療法
胃切除を行うち体力を消耗。術後化学療法はしんどい。…じゃぁ
4型(スキルス)、3型を対象にTS1+シスプラチンを2~3コース行う。

Conversion Surgery
StageⅣの進行胃癌はいきなり手術では治癒切除不可。
化学療法で切除可能になれば切除。

胃癌化学療法
HER2陰性:TS1+CDDP、TS1+OX
HER2陽性:Cape+CDDP+ハーセプチン(トラスヅマブ)
進行・再発胃癌化学療法のアルゴリズム
(二次:)ドセタキセルまたはパクリタキセル→(三次:)イリノテカン
(二次:)イリノテカン→(三次:)ドセタキセルまたはパクリタキセル
投与方法確認
補助療法のTS1は4投2休。
SP療法(TS1+CDDP)のTS1は3投2休。
他は大体、TS1を2投1休+点滴。
ゼローダは2投1休。

胃癌化学療法における副作用マネージメント

広島市民病院 薬剤部 妹尾啓司

TS1
流涙:角膜障害、涙道障害
角膜上皮幹細胞、角膜上皮細胞、涙小管上皮細胞では細胞分裂が盛ん。
防腐剤を含まない人口涙液(ソフトサンティア)wash out
症状持続の場合は受診。(涙管チューブの挿入などの処置)
早期対応でコントロール可能で継続服用できることが多い。

ゼローダ
手足症候群:手、足、爪。高度の物では疼痛を伴って発赤・腫脹し、水泡、びらんを形成。手掌・足底は角化、落屑著明で、亀裂を生じる。知覚過敏、歩行困難、物がつかめないなど。
皮膚基底細胞の増殖能の障害、エクリン汗腺からの薬剤分泌が原因。かも
予防:保湿クリームの頻回投与。
FTU(Finger Tip Unit):成人人差し指の先端から遠位指節間関節まで。0.5g

顔・首
2.5FTU
胸・腹
7FTU
背中
7FTU
片腕
3FTU
片手
1FTU
片脚
6FTU
片足
2FTU
顔・首に1日5回だと2.5*0.5*5*14=87.5gと14日で3本を超える。

CDDP
腎機能障害:シスプラチンの用量規制因子。近医尿細管腎障害と考えられている。
投与前後に約2L程度の輸液を行い、点滴時間も合計約9~10時間程度。
投与前後の輸液量を1Lに減らし、投与時間も4時間程度のshort hydration。その代り経口から1L以上の水分摂取を行う。

オキサリプラチン
末梢神経障害:(神経細胞体障害)後根神経節が障害されるため、主に感覚障害を呈する。顔面や体幹などの軸索長の短い神経も障害されることも多い。
他に、軸索障害(パクリタキセル、ピンクリスチン、コルヒチンなど)、髄鞘障害(アミオダロン、タクロリムスなど)
急性末梢神経症状
 ♦手や足、口のまわりがしびれたり痛む症状。
 ♦喉がしめつけられるような感覚があらわれる。
 ♦投与後すぐに。
 ♦2~3日たてばおさまることが多く、長く続かない。
蓄積性末梢神経症状
 ♦ボタンがはずしにくい。
 ♦しびれて歩きにくい。
 ♦細かな作業ができにくい
 ♦化粧が薄くなる。装飾品が少なくなる。

過敏症:IgEを介したⅠ型アレルギー。投与30分以内は特に注意。
累積投与量が約600mg/m2(8コース目)を超えると特に注意が必要。

ハピネス薬局082-299-3089広島市南区翠5-17-15
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