在宅の話はともかく、漢方の併用については参考になった。
2剤以上のエキス剤を組み合わせる意義
慢性の経過で2つの病態が併存する。
●柴胡剤を使いたいとき、しばしば駆瘀血剤(桂枝茯苓丸など)、利水剤(五苓散など)、気剤(半夏厚朴湯など)と併用。
足りない作用を増強する。
●関節炎症状に桂枝加朮附湯に防已黄耆湯を加えて関節水腫への対応を強化。
●葛根湯に真武湯を加え、冷えと水毒に対応 など。
副作用を軽減する。
●麻杏甘石湯+二陳湯、当帰芍薬散+人参湯、八味地黄丸+人参湯などはそれぞれ、麻黄、当帰、地黄などの胃腸障害を軽減する作用が期待される。
エキス剤に無い処方を作る。
●苓桂朮甘湯+四物湯=連珠飲(本間棗軒)
●当帰建中湯+黄耆建中湯=帰耆建中湯(華岡青洲)
●香蘇散+小柴胡湯=柴蘇飲(本朝経験)
●小建中湯+大建中湯=中建中湯(大塚敬節)
●小柴胡湯+桂枝加芍薬湯(相見三郎) など
エキス剤に無い処方に似せる。
●麻黄湯+越婢加朮湯 (大青竜湯)
●桂枝湯+越婢加朮湯 (桂枝二越婢一湯)
●桂枝湯+麻黄湯 (桂枝麻黄各半湯)
●真武湯+人参湯 (茯苓四逆湯)
●桂枝湯+麻黄附子細辛湯(桂姜棗草黄辛附湯) など
生薬の使用上の注意等
●甘 草:偽アルドステロン症、ミオパチー等
●麻 黄:自律神経系(不眠、頻脈、動悸等)、消化器(食欲不振、不快感、悪心等)、泌尿器(排尿障害など)
●大 黄:消化器(軟便、下痢、腹痛等)
●芒 硝:消化器(軟便、下痢、腹痛等)
●附 子:心悸亢進、のぼせ、下のしびれ
●地 黄:消化器(食欲不振、不快感、悪心等)
●当 帰:消化器(食欲不振、不快感、悪心等)
●川 芎:消化器(食欲不振、不快感、悪心等)
●桂 皮:過敏症(発疹、発赤、蕁麻疹等)
●人 参:過敏症(発疹、発赤、蕁麻疹等)
●柴 胡:泌尿器(膀胱炎様症状)
●黄 芩:免疫関連調整
●桃 仁:早流産の危険性
●牡丹皮:早流産の危険性
●牛 膝:早流産の危険性
●大 黄:子宮収縮、骨盤内臓器充血、母乳中移行(乳児の下痢)
在宅診療でよく使用される漢方
●全身倦怠感、免疫力低下:補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯
●食欲不振:補中益気湯
●イレウス、癌性腹膜炎:大建中湯
●胃もたれ:六君子湯、人参湯
●高齢者の風邪:香蘇散
●しびれ、足の冷え:牛車腎気丸+附子末
●認知症の行動・抑肝散
●不眠:半夏厚朴湯、抑肝散
●胃の痛み:安中散
●こむら返り:芍薬甘草湯
●微小循環改善、疼痛緩和:桂枝茯苓丸、当帰芍薬散
●全身・局所の浮腫改善:五苓散、柴苓湯、真武湯
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
●抑肝散:認知症に伴う行動・心理症状のうち易怒、幻覚、昼夜逆転、興奮、暴言、暴力など、いわゆる陽性症状に有効。
●半夏厚朴湯:誤嚥性肺炎既往患者の嚥下反射、咳反射を改善させ、肺炎発症抑制に有効。
●大建中湯:脳卒中後遺症における機能性便秘に対して有効。腹部術後早期の腸管蠕動運動促進に有効。
●麻子仁丸:高齢者の便秘に有効。
●補中益気湯:慢性閉塞性肺疾患における自他覚症状、炎症指標、栄養状態の改善に有効。
消化管症状のフローチャート
第一選択:六君子湯
第二選択:冷えがある場合、人参湯(乾姜が温める)
第三選択:冷え、腹痛、月経痛など安中散(延胡索、茴香、良姜が痛みを和らげる)
第二選択:暑がり、どちらでもない半夏瀉心湯(黄連・黄芩が冷まし乾姜が温める)
第三選択:腹部膨満感、咽喉頭異常感、神経症的傾向半夏厚朴湯(厚朴、蘇葉が気に作用)
第三選択:心下部膨満感、ゲップ、胸やけ:茯苓飲
第三選択:赤ら顔・のぼせ、胃酸分泌が強い:黄連解毒湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子が冷ます)
補剤
補中益気湯→十全大補湯→人参養栄湯の順に外来中心から在宅への傾向がある。