ハピネス薬局

透析患者のCKD-MBD

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常について

JR広島病院 人工透析外科 越智 誠 部長

慢性透析患者の推移
増加。385.1人に一人。導入開始の高齢化。
原疾患は以前は慢性糸球体腎炎だったが、今は糖尿病性腎症

腎代替療法
末期腎不全の治療。
1.腎臓移植
2.透析療法
 …腹膜透析(PD):在宅でできて高齢者に優しい治療なのに普及してない。
 …血液透析(HD)
3.対症療法:体力的に無理があるなど、透析の見合わせ ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)

日本は圧倒的にHD。他国では腎移植、PDも多い。
当然のようにHDではなく、移植、PDの説明を十分してからHDにすべきではないか。

慢性透析患者の死亡原因
心不全、脳血管障害、心筋梗塞などが多い。4割が心血管疾患。

CKD-MBD
chronic kidney disease-mineral and bone disorder

腎臓の働きが障害されると、活性型ビタミンDが不足する。
活性型ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収ができず、血液中のカルシウム濃度が低下する。
また、腎臓の働きが障害されると、尿中へのリンの排泄が低下するため、血液中のリン濃度が増加する。
カルシウムとリンの濃度を調整しようとして、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormon:PTH)の量が増加。
副甲状腺過形成。
二次性副甲状腺機能亢進症となる。
二次性副甲状腺機能亢進症が進行すると、高カルシウム、高リン状態が持続して、過剰なカルシウム、リンが血管壁の石灰化を起こす。
(PTH[パラトルモンとも呼ばれる]は、
 破骨細胞を間接的に刺激して骨吸収を促進。
 遠位尿細管とヘンレ係蹄上行脚でカルシウムおよびマグネシウムの再吸収を亢進。
 近位尿細管におけるリンの再吸収を抑制して排泄させる。
 腸においてビタミンDの生成促進。(1-αヒドロキシル化酵素の発現誘導による腎臓における活性型ビタミンDへの変換を促進)
 腸管および骨より血中へのリンの取り込み・放出を亢進する。  血液中のカルシウムにより、副甲状腺の細胞上にカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制されるフィードバック機構。
ミネラル代謝障害、骨代謝障害=腎性骨異栄養症(ROD)、異所性石灰化。

FGF23
骨芽細胞や骨細胞で合成されるポリペプチドで、リン調節を行っているホルモン。
近位尿細管からのリン再吸収を抑制。
ビタミンDは抑制。→腸管からのリン吸収を抑制。
Klothoとペアで働くと考えてよい。
CKDのステージがあがるとFGF23も上昇している。
Klotho
クロトー
老化抑制に関するタンパク。
膜型KlothoはFGFレセプターとの複合体を形成し、FGF23に対する親和性を高める。
腎、副甲状腺、下垂体などの限られた組織に発現。

二次性副甲状腺機能亢進症
多量の副甲状腺ホルモンにより、骨がもろくなり、関節痛、骨折の原因。
骨から溶け出したカルシウムやリンが血管で固まり、動脈硬化を引き起こす。
リンはかゆみの原因。
ESA(erythropoiesis-stimulating agents)抵抗性貧血の原因。

ビタミンD3
肝臓で、25位水酸化。25(OH)D3
腎臓で、1α位水酸化。1.25(OH)2D3:活性型ビタミンD3
活性型ビタミンD3は、
 …PTH合成・分泌抑制、
 …カルシウム再吸収促進(腎)、
 …石灰化促進(骨)、
 …カルシウム吸収促進(腸管)
増えすぎたリンはカルシウムとともに、関節、血管などで異所性石灰化。
HD患者への活性型ビタミンD3は心血管系死亡リスクを減少させる。
死亡率でリンはJ型。つまり低すぎてもよくない。 

高リン血症治療薬(リン吸着薬)
カルシウム含有
カルタン
利点:安価。低Ca補正
欠点:血管石灰化、高Caリスク
カルシウム非含有
血管石灰化のリスク低減
ホスレノール
炭酸ランタンが腸管内でリン化合物を形成し吸収を阻害
利点:リン吸着力が高い。
欠点:高価、吐き気。長期使用で重金属ランタン蓄積は?
リオナ:
リンを治す
クエン酸第二鉄。フェロミアは第一鉄。Fe2+でないと吸収されない。胃酸で還元
利点:鉄補充、下痢(水分制限、薬、運動不足で便秘気味)
欠点:高価、鉄過剰
ピートル:
P取る
スクロオキシ水酸化鉄(第二鉄)。胃の中ででんぷんとスクロースが溶け、
表出された水酸化鉄とリンが吸着する。鉄の露出が過剰にならない。
利点:リン吸着力が高い。下痢。鉄吸収が少ない。
欠点:高価
非吸収性ポリマー
レナジェル
セベラマー
利点:LDLの低下、抗炎症作用
欠点:リン吸着力が弱い、便秘、アシドーシス
キックリン:
効くリン
ビキサロマー
利点:便秘の低減、アシドーシスなし
欠点:カプセル

二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬
活性型ビタミンD剤:欠点 高カルシウム、高リン
カルシウム受容体作動薬:治療が格段に進歩。
レグパラ:利点、カルシウム、リン低下。
 欠点、低カルシウム、悪心嘔吐
パーサビブ(注射)

栄養管理
しっかり食べてしっかり透析

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