急性疼痛は生体防御のための警告。
慢性疼痛はシステム自体の故障のための警告の継続状態。
漢方は一般に慢性疼痛。だが完全に治ることはまずない。
痛みが先か体調不良が先か。
「不通則痛」通じなければ痛む。寒冷や湿気で気と血の流れが悪くなり痛む。
「不栄則痛」栄養状態、気の低下。エネルギー不足により機能低下して痛む。
慢性痛に対する漢方
「気・血・水」の異常を改善して鎮痛を得る。
…冷えを訴えることが多い。
…精神的な緊張やうつ状態を伴うことが多い。
冷え、腫脹 → 水
血流不全(冷え) → 血
緊張・うつ状態 → 気
瘀血
眼輪部の色素沈着、唇の暗赤化、月経異常
血虚
顔面蒼白、皮膚枯燥、息切れ、健忘、貧血
気虚
疲れやすい、食欲不振、気力がない、体がだるい
気鬱・気逆
情緒不安定、発作性頭痛、のぼせ、イライラ、動悸、抑鬱傾向、胸苦しい
水毒
たちくらみ、頭重感、めまい。
生薬と薬理学的作用
鎮痛作用を期待
附子、麻黄、大黄、葛根、呉茱萸、防風、当帰、細辛、厚朴、柴胡
筋肉の凝りを緩和
葛根、芍薬、柴胡
しびれ、麻痺を緩和
附子、 黄芩、牡丹皮、桃仁、茯苓、生姜
痺証
痺とは閉じると言う意味。寒さや湿気などによって、気血の運行が妨げられ関節や筋肉の疼痛、腫脹、しびれ、運動障害が出現。
袪風湿薬(遊走・関節痛・こわばり、水腫の緩和)
湿性
麻黄、朮、桂皮、川芎、防風、羌活、細辛
平性
牛膝
寒性
薏苡仁、防已
+
散寒薬
附子、桂皮、乾姜、麻黄、当帰、川芎、細辛、呉茱萸
利水薬
朮、防已、薏苡仁、茯苓、猪苓、沢瀉、牛膝、呉茱萸
補益薬
人参、黄耆、地黄、芍薬、附子
駆瘀血薬
桃仁、牛膝、当帰、川芎
清熱薬
石膏、黄柏、黄連、黄芩、薏苡仁
腓腹筋(ふくらはぎ)痙攣:こむらがえり
芍薬甘草湯
下降性疼痛抑制系活性化。
急激に起こる筋肉(おもに下腿)の痙攣的疼痛、
ならびに腹部疝痛を訴える場合に用いる。
甘草が多いため、続ける場合は、疎経活血湯に切り替える。
変形性膝関節症
防已黄耆湯
比較的体力が低下し、色白で筋肉柔らかく、いわゆる水ぶとり体質の人が、全身倦怠感。多汗傾向を訴える場合の関節の腫脹・疼痛。
患部が多他覚的に冷たい:桂枝加朮附湯。他覚的に熱い:越婢加朮湯
越婢加朮湯
比較的体力のある人で、浮腫、発汗傾向、口渇があり、尿量減少する場合の四肢関節の腫脹、疼痛、熱感。
桂枝加朮附湯
冷え症で体力の低下使途た人が、四肢関節の疼痛、腫脹、四肢の運動障害を訴える場合。関節痛があり寒冷により増悪する場合。
腰痛、下肢痛
冷えると痛むもの → 温める薬
熱を持って痛むもの → 冷やす薬
冷えで増悪する腰痛・下肢痛等の漢方処方
牛車腎気丸
比較的体力の低下した人あるいは老人で腰部および下肢の脱力感、冷え、しびれなどがあり、排尿の異常(特に夜間の頻尿)を訴える場合。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
平素より冷え症で体質虚弱な人が、寒冷のため手足が冷えて痛み、下肢疼痛や腰痛を訴える場合。
疎経活血湯
体力中等度の人で、腰部より下肢にかけての筋肉、関節、神経が痛む場合。 … 慢性の痛み
桂枝加朮附湯
冷え症で体力の低下した人が四肢関節の疼痛、腫脹、四肢の運動障害を訴える場合。
苓姜朮甘湯
★ 冷えや天候の変化が悪化要因の腰痛の第一選択。
★ 冷えが悪化要因では附子を加える。
★ 腰痛の奏効率は一番高い。
★ 水毒兆候がある腰痛に用いる。
★ 腰がだるく、腰の周りがスースーと冷えることや大腿部の冷えを目標とする。
打撲、捻挫、骨折
瘀血
治打撲一方
★ 患部の腫脹疼痛例。
★ 受傷直後より、数日経過例に用いる。
★ 数年後に昔の傷が痛んできた場合にもよい。
★ 重症・便秘例では駆瘀血薬と併用。
桂枝茯苓丸
★ 早期軽症の打撲後の皮下うっ血、疼痛例。
通導散
★ 初期で局所お腫脹が強く、皮下血腫例。
大黄で瀉下があるが、瀉下で痛みが取れることがある。