ハピネス薬局

糖尿病


DMについて

DMの薬もここ数年で新しい機序のものが出てきて、SU剤が中心ではなくなってきた。

研修(2016/10/6)で聞いた内容は、HbA1c7.0%目標にするが、早期に治療開始し、7.0%を達成した場合、細小血管合併症を抑制できる。

また、継続すると、長期にわたり大血管合併症も抑制できている。

ただし、罹患期間が長く、その他リスクの多い場合に、厳密な血糖コントロールを行うと、低血糖他のアクシデントで逆に死亡例が増える。

血圧、脂質、禁煙など日常生活のコントロールと穏やかな血糖コントロールが重要で、ガイドラインも変更された。

高齢者(65歳以上)糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1値)
患者の特徴・健康状態カテゴリーⅠカテゴリーⅡカテゴリーⅢ
75歳未満75歳以上
①認知機能正常
且つ
②ADL自立
①軽度認知障害
~軽度認知症
または
手段的ADL低下、
基本的ADL自立
①中等度以上の認知症
または
②基本的ADL低下
または
③多くの共存疾患
・機能障害
重症低血糖が危惧される薬剤の使用
(インスリン製剤、SU剤、グリニド薬など)
7.0%未満7.0%未満8.0%未満
7.5%未満
(下限6.5%)
8.0%未満
(下限7.0%)
8.0%未満
(下限7.0%)
8.5%未満
(下限7.5%)

DMの指導員として医療スタッフの中で、CDEJという資格もある。

また、DMでは一包化には注意が必要。低血糖が起きるような場合に減量ができないので危険。

なにより、患者の教育、病識、意識改革が重要。

ポリファーマシー対策として減薬した場合は、Hpから開業医、保険薬局に渡って情報共有など連携して減薬への責任を負うこと。

意外だったのは、インスリンの手技がおざなりになっていることがあるとのこと。

握力が弱いなどで押せていない、目が悪いので単位が間違っている、針を取り替えないので蓋ができてない。(温度だけでなく光にも不安定)

皮膚硬結が起きていると期待した効果が得られない。(注射部位を適切にずらしていない。左右交互に打っているだけとか)

この場合、急に新たな場所に変えると低血糖になりかねないので、Dr.の指示に従う。

DPP-4阻害

血糖のコントロールには、食事の摂取などにより消化管から産生されるホルモン(インクレチン)が大きく関与している。

インクレチンは、血糖値が高い場合にインスリン分泌を増強するが、血糖値が正常あるいは低い場合にはインスリンを増強しないので必要以上に血糖を下げない。

またインクレチンは、グルカゴンの分泌を低下させ、肝臓における糖新生を抑制する。

インクレチンを活性化する作用を持つ薬剤として、インクレチン分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)の選択的阻害薬、また、インクレチンのアナログ製剤であるGLP1(グルカゴン様ペプチド1)の注射製剤が臨床使用されている。

DPP-4阻害薬のリスト。 STEMは -gliptin

シタグリプチン
 (ジャヌビア:MSD、グラクティブ:小野)

最初に発売されたDP-P4阻害薬。売上も15年度8位とDMの治療薬では断トツ1位。グラクティブ:38位

食事の影響を受けない。腎排泄型のため、腎機能の程度により用量を調整。

排泄:尿中(79-88%) 腎機能障害:重度 1/4量、中等度 1/2量、腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
シタグリプチンとして50mgを1日1回経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。
SE:
低血糖、重い皮膚・粘膜障害、肝機能障害・黄疸、急性腎不全、急性膵炎、間質性肺炎、腸閉塞、横紋筋融解症、血小板減少など
薬価:
2016 ジャヌビア錠12.5mg:60.8円、25mg錠:73.9円、50mg錠:136.5円、100mg錠:205.4円
グラクティブ錠12.5mg:61.2円、25mg錠:74.6円、50mg錠:138.2円、100mg錠:207.6円
136.5円/日 (138.2円/日)

ビルダグリプチン
 (エクア:ノバルティス)

血糖低下作用は現在のDPP-4阻害薬で最も強い。1日2回の服用。

15年度売上:27位

朝の服用は食後血糖上昇を抑制し、夕の服用はグルカゴン抑制による夜間の血糖の上昇を抑制。

肝障害を起こすことがあるため、定期的に肝機能検査をおこなう。

排泄:主に代謝・尿中(22.7%)

腎機能障害:慎重投与(1回/1日)、

肝機能障害:重度 禁忌、中等度以下慎重投与(1回/1日)、腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
ビルダグリプチンとして50mgを1日2回朝、夕に経口服用する。
なお、患者の状態に応じて50mgを1日1回朝に服用することができる。
SE:
肝炎・肝機能障害、血管浮腫、低血糖症、横紋筋融解症、急性膵炎、腸閉塞、間質性肺炎、(皮膚障害)など
薬価:
2016 エクア錠50mg:80.1円
160.2円/日

アログリプチン
 (ネシーナ:武田)

腎排泄型低用量剤形→(30≦Ccr<50mL/min):12.5mg錠、(Ccr<30mL/min):6.25mg錠

15年度売上:33位

排泄:尿中(72.8%) 腎機能障害:重度 1/4量、中等度 1/2量、腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
アログリプチンとして25mgを1日1回経口服用する。
中等度以上の腎機能障害患者では、投与量を適宜減量する。
SE:
低血糖、急性膵炎、肝機能障害・黄疸、皮膚粘膜眼症候群・多形紅斑、横紋筋融解症、間質性肺炎など
薬価:
2016 ネシーナ錠6.25mg:50.4円、12.5mg錠:93.4円、25mg錠:174.2円
174.2円/日

リナグリプチン
 (トラゼンタ:ベーリンガー)

胆汁排泄型。腎排泄率は約5%のみ。肝臓でも代謝をほとんど受けず、腎機能および肝機能障害者においても血中濃度が上昇しないため、用量を調節する必要がなく、透析患者でも服薬できる。

15年度売上:35位と急伸

キサンチン骨格を有する分子構造により、DPP- 4に対して高い親和性と選択性を示し、低用量で長時間持続。(t1/2:105hr)

排泄:便中(80%) 腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
リナグリプチンとして5mgを1日1回経口服用する。
SE:
低血糖症、腸閉塞、肝機能障害など
薬価:
2016 トラゼンタ錠5mg:171.9円
171.9円/日

テネリグリプチン
 (テネリア:田辺三菱)

初の国産DPP-4阻害薬。(どうでもいい)

半減期:24.2hr、肝代謝、腎排泄

排泄:尿便中 半々 肝機能障害:重度 慎重投与、腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
テネリグリプチンとして20mgを1日1回経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら40mg1日1回に増量することができる。
SE:
低血糖症、腸閉塞、肝機能障害、間質性肺炎など
薬価:
2016 テネリア錠20mg:169.9円
169.9円/日

アナグリプチン
 (スイニー:三和)

薬価が一番低い。他の血糖降下薬と併用に制限。(グリニド系、インスリン製剤)

排泄:尿中(73.2%) 腎機能障害:重度(Ccr<30) 1回/1日

腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
アナグリプチンとして1回100mgを1日2回朝夕に経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を200mgまで増量することができる。
SE:
低血糖症、腸閉塞など
薬価:
2016 スイニー錠100mg:68.6円
137.2円/日

サキサグリプチン
 (オングリザ:協和発酵キリン)

腎排泄型。腎臓病があっても使用可能だが、中等度以上の腎機能障害がある場合は半量にする。

排泄:尿中(75%)糞中(22%) 腎機能障害:中等度以上(Ccr<50) 半量、腸閉塞:慎重投与


適応:
2型糖尿病
用法:
サキサグリプチンとして5mgを1日1回経口服用する。
なお、患者の状態に応じて2.5mgを1日1回経口服用することができる。
SE:
低血糖症、急性膵炎、 過敏症反応(アナフィラキシー、血管浮腫)、 腸閉塞など
薬価:
2016 オングリザ錠2.5mg:91.8円、5mg錠:138円
138円/日

トレラグリプチン
 (ザファテック:武田)

週1回。腎排泄型。中等度腎機能障害は半量、高度腎機能障害では使用しない。


適応:
2型糖尿病
用法:
トレラグリプチンとして100mgを1週間に1回経口服用する。
30≤Ccr<50:50mgを1週間に1回経口服用する。
SE:
低血糖など
薬価:
2016 ザファテック錠50mg:559.2円、100mg錠:1045.1円 149.3円/日

オマリグリプチン
 (マリゼブ:MSD)

週1回。おもに腎排泄型。重度の腎機能障害がある場合は半量。


適応:
2型糖尿病
用法:
オマリグリプチンとして25mgを1週間に1回経口服用する。
eGFR<30:12.5mgを1週間に1回経口服用する。
SE:
低血糖など
薬価:
2016 マリゼブ錠12.5mg:543.3円、25mg錠:1015.3円
145.0円/日

INCRETIN:インクレチン (GLP1作動薬)


糖を経口的に摂取すると注射で投与した時よりも大きなインスリン作用が現れる。これはホルモンの作用によるもので、インクレチンと名付けられた。
INCRETIN=「INTESTINE:」,「SECRETION:分泌」,「INSULIN: インスリン

インクレチンは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド:Glucgon-like peptide-1)
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド:Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の2種類。

GLP-1は主に小腸の下部から分泌され、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、α細胞からのグルカゴン分泌を抑制。

膵臓以外にも、胃では腸へ食べ物が送られるのを抑え、食後過血糖を防ぎ、中枢では食欲を抑える。

GIPは小腸の上部から分泌され、GLP-1と同様に膵臓に作用しインスリンの分泌を促進。(GLP-1の方が強力)

また、骨をつくったり、脂肪細胞を蓄積したり吸収されたエネルギーを処理する機能がある。

インクレチンは、血液中でDPP-4により速やかに分解されてしまうため、インクレチンを利用する目的でDPP-4阻害薬が開発されたが、GLP-1受容体作動薬も開発された。

GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体を介して、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させ、また、グルカゴン分泌を抑制する。

自己会合により緩徐に吸収されること、アルブミンと結合してDPP-4および中性エンドペプチダーゼに対する安定性を示すことで作用が持続。

GLP1作動薬のリスト

リラグルチド
 (ビクトーザ・ノボ ノルディスク)

リラグルチド(遺伝子組換え)として、0.9mgを1日1回朝または夕に皮下注射する。
ただし、1日 1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日0.9mgを超えないこと。
ビクトーザ皮下注18mg 3mL:10,245円 (512.25円/日)

エキセナチド
 (バイエッタ、ビデュリオン・アストラゼネカ)

エキセナチドとして、1回5μgを1日2回朝夕食前に皮下注射する。
投与開始から1ヵ月以上の経過観察後、患者の状態に応じて1回10μg、1日2回投与に増量できる。
バイエッタ皮下注5μgペン300 300μg(5μg):9,937円、10μgペン300 300μg(10μg):9,937円 (331.23~662.47円/日)

ビデュリオン

エキセナチドとして、2mgを週に1回、皮下注射する。
ビデュリオン皮下注用2mgペン:3,586円 (512.29円/日)

リキシセナチド
 (リキスミア・サノフィ)

リキシセナチドとして、20μgを1日1回朝食前に皮下注射する。
ただし、1日 1回10μgから開始し、1週間以上投与した後1日1回15μgに増量し、
1週間以上投与した後1日1回20μgに増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日20μgを超えないこと。
リキスミア皮下注300μg 3mL:7,171円 (478.06円/日)

デュラグルチド
 (トルリシティ・イーライリリー)

デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75mgを週に1回、皮下注射する。
トルリシティ皮下注0.75mgアテオス 0.5mL :3,586円 (512.29円/日)

SGLT2阻害


SGLT(sodium-dependent glucose co-transporter:ナトリウム・グルコース共役輸送体)はNa/KATPaseによって形成された ナトリウム濃度勾配を利用し、ナトリウムやグルコース(ブドウ糖)といった栄養分を細胞内に取り込む細胞膜上のタンパク質。
GLUT:glucose transporterとは主に細胞内外のグルコース濃度差にしたがって、輸送を行う細胞膜上のタンパク質

SGLTには6種類のサブタイプがあるが、腎臓での糖の再吸収に関わるのはSGLT1(10%)と2(90%)。

1は小腸でのグルコース・ガラクトースの吸収、心筋・骨格筋・脳での糖吸収に関わる。

3は小腸・骨格筋、4は小腸・肝・腎・胃・肺。

糸球体で尿中に排泄されたグルコースは近位尿細管に発現するSGLTを介して再吸収されるため、SGLT阻害により、糖はそのまま排泄される。

1も抑えた方が効果は高くなる理屈だが、SGLT2に選択性の高いものが全身作用が少ない。

尿路感染、性器感染のある患者、脱水を起こしやすい患者は避けること。

SGLT2阻害薬のリスト。 STEMは -gliflozin

イプラグリフロジン
 (スーグラ:アステラス・MSD)

最初のSGLT2阻害薬。シェアNo.1。選択性は中程度。(約860)
重度の肝機能障害のある患者に対しては低用量から開始するなど慎重に投与する。

適応:
2型糖尿病
用法:
イプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。
SE:
低血糖、腎盂腎炎、脱水、ケトアシドーシスなど
薬価:
2016 スーグラ錠25mg:135円、50mg錠:202.8円
202.8円/日

ダパグリフロジン
 (フォシーガ:ブリストル・ブリストル・小野)

「1日1回」という用法(他の薬剤は「朝食前または朝食後」)。海外での臨床データが豊富。選択性は低め。(約610)

適応:
2型糖尿病
用法:
ダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
SE:
低血糖、腎盂腎炎・敗血症、脱水、ケトアシドーシスなど
薬価:
2016 フォシーガ錠5mg:202.1円、10mg錠:302.8円
202.1円/日

ルセオグリフロジン
 (ルセフィ:大正富山・ノバルティス)

「腎排泄と肝代謝という2つの代謝経路を併せ持つ。選択性は高め。(約1600)

適応:
2型糖尿病
用法:
ルセオグリフロジンとして2.5mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら5mg1日1回に増量することができる。
SE:
低血糖、腎盂腎炎、脱水、ケトアシドーシスなど
薬価:
2016 ルセフィ錠2.5mg:202.2円、5mg錠:303.3円
202.2円/日

トホグリフロジン
 (アプルウェイ:サノフィ、デベルザ:興和)

SGLT2選択性が最も高く(約2900)、半減期が最も短い。

適応:
2型糖尿病
用法:
トホグリフロジンとして20mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。
SE:
低血糖、腎盂腎炎、脱水、ケトアシドーシスなど。
薬価:
2016 アプルウェイ錠20mg:203.9円、デベルザ錠20mg:202.8円
203.9円/日 (202.8円/日)

カナグリフロジン
 (カナグル:田辺三菱・第一三共)

SGLT1阻害作用。すなわち選択性が低い。(約290)

適応:
2型糖尿病
用法:
カナグリフロジンとして100mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。
SE:
低血糖、腎盂腎炎、脱水、ケトアシドーシスなど
薬価:
2016 カナグル錠100mg:205.5円
205.5円/日

エンパグリフロジン
 (ジャディアンス:ベーリンガー・イーライリリー)

DPP4阻害薬(シタグリプチン)に対して効果非劣性。SGLT2選択性が高い。(約1100) 最も高いというデータも。

適応:
2型糖尿病
用法:
エンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら25mg1日1回に増量することができる。
SE:
低血糖、腎盂腎炎、脱水、ケトアシドーシスなど
薬価:
2016 ジャディアンス錠10mg:208.4円、25mg錠:356円
208.4円/日
ハピネス薬局082-299-3089広島市南区翠5-17-15
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